死刑執行に英国大使館が「いかなる状況でも反対」 日英の世論を並べてみる
昨日書いた、大阪のホール放火殺人事件の死刑執行。その続報として、少し違う方向から話題が広がっています。
駐日英国大使館が反対の立場を表明
執行が発表された8月21日、駐日英国大使館の公式アカウントが投稿を行いました。
内容を要約すると、今回の執行は2025年6月以来であること、そして英国は長年、いかなる状況でも原則的に死刑に反対の立場であることを伝えるものです。
これに対して、SNSでは内政干渉ではないかという反発が相次ぎました。一方で、事件の重大さを踏まえた冷静な議論を求める声もあります。
正直に書くと、この話題はもうパチンコ業界の記事の範囲を超えています。ただ、昨日の記事の続きとして触れないのも不誠実だと思うので、事実を並べる形で整理してみます。
まず押さえたい:これは定例の対応である
意外と知られていないことから。英国大使館のこの投稿は、今回に限った特別なものではありません。
2022年7月、別の死刑囚の執行が行われた際にも、同じアカウントがほぼ同一の文面で投稿しています。
さらに範囲を広げると、駐日EU代表部およびEU加盟各国、アイスランド、ノルウェー、スイスの駐日大使館が、日本での死刑執行を受けて共同声明を出す慣例もあります。
| 主体 | 対応 |
|---|---|
| 駐日英国大使館 | 執行のたびに反対の立場を表明 |
| 駐日EU代表部・加盟国等 | 共同声明を発表する慣例 |
| 国際人権団体 | 抗議声明を発表 |
つまり、この事件だからという話ではない。 執行があれば必ず出る、定型の対応です。
もっとも、「定例だから気にするな」で片付く話でもありません。毎回同じ文面が出ることに対して、形骸化しているという受け止めもあれば、立場を貫いているという評価もあります。ここは見方が分かれるところです。
英国はなぜ死刑を廃止したのか
批判するにも理解するにも、相手の背景を知らないと話が進みません。
英国は1969年に死刑を原則廃止しました。第2次世界大戦が、命の尊さについて再考する契機になったとされています。政府が設けた死刑に関する委員会は1953年の報告書で「どの殺人が死刑相当で、どの殺人がそうでないかを提示することは不可能」と結論を出しました。また1950年代に誤審事件が起きたこともきっかけとなり、「誤審の危険性」と「死刑の不可逆性」に対する国民の問題意識が高まったとされています。
ポイントは「誤審の不可逆性」です。間違って執行してしまったら、取り返しがつかない。この一点が、英国の廃止論の中心にあります。
ただし、英国国内も一枚岩ではない
ここは重要なので強調しておきます。現在、英国で死刑を支持する世論は40%台とされています。
4割です。 廃止から半世紀以上が経った今も、それだけの人が支持している。「英国民全員が死刑に反対している」わけではありません。
日本の世論はどうなっているか
では日本側の数字を見てみましょう。
内閣府が2024年10月から12月にかけて実施した「基本的法制度に関する世論調査」によれば、死刑制度について「死刑もやむを得ない」と回答したのは83.1%、「死刑は廃止すべきだ」は16.5%でした。
容認理由と廃止理由も公表されています。
| 立場 | 最も多かった理由 |
|---|---|
| 容認(83.1%) | 廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない(62.2%) |
| 廃止(16.5%) | 裁判に誤りがあったとき、死刑にしてしまうと取り返しがつかない(71%) |
ここで、気づいてほしいことがあります。
実は、論点は同じところにある
日本の廃止派が挙げた最多の理由は「裁判に誤りがあったとき、取り返しがつかない」。
そして英国が廃止に至った中心的な理由も「誤審の危険性」と「死刑の不可逆性」。
同じことを言っています。
しかも日本側の数字には動きがあります。この「誤審は取り返しがつかない」という回答は前回調査までは5割ほどで推移していましたが、今回71%まで上昇しました。2024年10月に再審無罪が確定した事件などの影響があるとみられています。
つまり日本でも、実際に誤審の事例が可視化されたことで、同じ論点への意識が高まっているということです。
数字を並べ直すと
| 日本 | 英国 | |
|---|---|---|
| 制度 | 存置 | 1969年に原則廃止 |
| 死刑を支持・容認する層 | 83.1% | 40%台 |
| 反対側の中心的論拠 | 誤審の不可逆性(71%) | 誤審の危険性と不可逆性 |
両国とも、国内で意見が割れています。 制度としての結論は違いますが、議論している中身はかなり近い。
「日本 対 英国」という構図で見ると対立に見えますが、実際には両国それぞれの中に賛成と反対がいるというのが実情です。
ユーザーの反応
この表明に対する反応を要約して紹介します。
- 「他国の司法制度への言及は控えるべきで、内政干渉に感じる」という指摘(反発の反応要約)
- 「自国の価値観を基準にした物言いに違和感がある」という指摘(姿勢を批判する反応要約)
- 「被害者遺族の立場を想像すれば、簡単に言える話ではない」という指摘(遺族感情を挙げる反応要約)
- 「立場を一貫して表明し続けること自体は、外交として筋が通っている」という声(対応を評価する反応要約)
- 「制度の是非は別として、なぜ英国が廃止に至ったかを知る機会にはなった」という声(背景理解を促す反応要約)
反発が目立ちましたが、5つ目のような受け止め方をしている人も一定数いました。
まとめ:結論は違っても、土台は共有できる
死刑制度の是非について、この記事で立場を取ることはしません。賛否が大きく分かれる問題であり、それぞれが考えるべきことだと思っています。
ただ、調べてみて感じたことがひとつあります。
日本の廃止派も、英国の廃止論も、同じ「誤審の不可逆性」という論点に立っていました。 そして英国にも死刑を支持する人が4割いて、日本にも廃止を求める人が16.5%いる。
国と国が異なる価値観でぶつかっている、という単純な図式ではありません。どちらの社会にも同じ論点があり、同じように悩んでいる。ただ、たどり着いた結論と、そこに至った歴史が違うだけです。
戦争の記憶から命の重さを問い直した国と、被害者遺族の心情を重く見る国。どちらの重みも、その社会が背負ってきたものから来ています。
相手の結論に同意する必要はありません。ただ、なぜその結論に至ったのかを知ろうとする姿勢は、お互いに持っていたい。今回の一件で感じたのは、そのくらいのことです。
※本記事は2026年8月23日時点の公開情報に基づきます。死刑制度に関する記述は内閣府「基本的法制度に関する世論調査」(2024年10月〜12月実施)および各種報道を参照しています。本記事は死刑制度の是非について特定の立場を主張するものではありません。投稿の内容および反応はSNS上の投稿を要約したもので、原文の引用ではありません。
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